お役立ちコラム

塗装工事でトラブルにならないために知っておくべき資格要件と建設業許可を解説

【塗装業に資格は不要? 誰でもできるからこそ注意が必要です】

 

塗装業を営むうえで、500万円未満の塗装工事であれば、資格や建設業の許可は必要ありません。
 
そのため、極端な話ですが、一度も刷毛やローラーを握ったことがない個人でも、今日から「塗装業者」として仕事を請負うことができるのです。
 
ただし、500万円以上の塗装工事を請け負う場合や、元請けとして請負う場合には、建設業法に基づく「建設業許可」が必要です。
 
建設業許可は、経営の安定性や技術者の有無、法的遵守などの要件を満たす必要があり、これを取得することで、公共事業への参加や大規模工事の受注が可能になります。
 
これは、塗装業者としての信頼性を示す重要な点です。
 
とはいえ、「建設業許可」や「資格」がなくても塗装業を始められる現実があるため、誰でも参入できます。
 
しかし、塗装業に資格が存在しないわけではありません。現場の安全管理や職人の技術向上を目的とした、厚生労働省や労働基準監督署が実施する講習や技能資格がいくつもあります。
 
たとえば、※1「厚生労働省が行う塗装技能士(1級・2級)」や、※2「労働基準監督署が実施する有機溶剤作業主任者」※3「安全衛生推進者」※4「足場の組立て等作業主任者」などがあり、これらの資格を取得することで、より専門的で信頼性の高い施工が可能になり、管理責任者としての職務を適切に遂行することができます。
 
また、ガソリンやシンナー等の危険物を取り扱うため、「危険物取扱者」の資格が必要となります。
 
この資格は、都道府県の消防本部(消防試験研究センター)が管轄する国家試験に合格することで資格を取得できます。
 
特に、シンナーや溶剤を使用する塗装現場や、塗料を保管してる倉庫では必ず有資格者の設置が法令で義務付けられています。
 
危険物倉庫には消防署による立入検査があり、無予告で実施されることもあり、危険物の保管状況、消火設備、通風設備、防爆型の電気設備などが点検されます。
 
他の業種と比較してみましょう。たとえば、飲食店を開業するには、「食品衛生責任者」や「飲食店営業許可」などの管理責任者・法的資格・許認可が必須です。
 
また、従業員を雇う際には労働保険や社会保険の加入義務もあります。このように、他の業種と比べても、塗装業は参入の壁が低く、誰でも始められる業種であるといえます。
 
資格や経験がなくても始められるために、知識も技術もない業者が「プロ」を名乗り、消費者を騙すような悪徳リフォーム業者や詐欺まがいの点検商法が後を絶ちません。
 
先日の日経新聞の記事にも大きく載ってました。
 
だからこそ、本当に信頼できる塗装業者を選ぶ目を持つことが何より大切です。
 
このコラムでは、「失敗しない塗装工事」を実現するために、見極めるポイントや信頼できる業者の条件について、わかりやすく紹介・解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
 
※1厚生労働省 | 技能検定制度について
※2福岡県労働基準協会連合会 | 有機溶剤作業主任者技能講習
※3厚生労働省 | 安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。
※4建設業労働災害防止協会 | 足場の組立て等作業主任者技能講習

 

【1級塗装技能士】

1級塗装後技能士取得条件の流れの話の前にすこし自慢?話をさせてください。
 
私の母親は、父と結婚してから父の塗装業を手伝うようになりました。
 
母は特に調色が得意で、よく父と一緒に塗料に色を混ぜて色を作っていたことを今でもよく覚えています。
現在では、塗料メーカーに色番号で注文をすることが一般的になり、現場で調色をする機会はほとんどなくなりました。
 
そんな母が、国家資格である「2級塗装技能士」を取得しました。当時、女性で塗装技能士の資格を取得したのは、母が日本で初めてでした。
 
私がまだ小学生の頃、新聞社やテレビ局が家に取材に来て、大変にぎやかな日々が続いたことを今でも覚えています。
 
普段は母親とケンカが絶えなかった父も、そのときばかりは母のことを誇らしげに話していました。
 
塗装技能士は、厚生労働省が認定する国家資格で、塗装に関する高度な知識と技能を有することを証明するものです。
 
​この資格は、建築塗装、木工塗装、金属塗装、鋼構造物塗装、噴霧塗装の5つの分野に分かれており、それぞれの分野で1級から3級までの等級があります。
 
塗装技能士の試験は、学科試験と実技試験の2つで構成されています。
​両方の試験に合格することで、塗装技能士として認定されます。学科試験は、塗装に関する知識を問う筆記試験で50問出題されます。
 
実技試験では、実際の塗装作業を通じて技能を評価します。
 
​試験内容は等級や選択した分野によって異なりますが、普段の業務の塗装では塗らないような種類の工作物も塗装しなければなりません。
 
その為練習や勉強が必要です。以下は建築塗装作業の1級試験の例です。​
 
(主な作業内容)
・パテ処理: ラワン合板にパテを施し、表面を平滑に仕上げます。
 
・ケガキ線作業: 定規やコンパスを使用して、指定された図形を正確に描きます。
 
・調色作業: 見本の色に合わせて塗料を調合し、色合わせを行います。
 
・刷毛塗り作業: 刷毛を用いて、つや有り合成樹脂エマルションペイントを2回塗りします。
 
・ローラー塗装: ローラーブラシを使用して、合成樹脂エマルションペイントを塗装します。
 
・吹付け塗装: スプレーガンを用いて、指定されたパターンの吹付け塗装を行います。
 
塗装技能士の資格は、単に技能を証明するだけでなく、職人としての向上心や責任感を示すものでもあります。
 
弊社ではこの1級塗装技能士(仕上)の資格所得した塗装工が4名在籍しており、資格所得のためのサポートも積極的に行う体制を整えてます。
 
参考:厚生労働省 | 技能検定職種及び試験基準

 


 

 

【建設業許可】

弊社の建設業許可は「塗装工事業・防水工事業」で取得しております。

最初の許可は、福本塗装工業有限会社として昭和40年代に取得し、その後、昭和50年11月5日に更新されました。現在は社名を株式会社フクモト工業へ変更し、引き続き同建設業許可のもと事業を行っております。
 
(法人設立時の建設業許可)

 
(現在の建設業許可)

 

【建設業許可申請の要件】

建設業の許可の要件
1.経営業務の管理責任者がいること
 
・申請する法人または個人事業主において、過去5年以上、建設業の経験業務を行った経験がある人物がいること。
 
・例:会社役員(代表取締役、取締役)個人事業主など。
過去5年以上、建設業の経営業務経験を有する人物(法人役員や個人事業主)が必要です。

2.専任技術者(管理責任者)がいること
 
・国家資格の現場の施工管理を行う管理責任者:1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士、塗装技術で施工を行う塗装工:1級塗装技能士、2級塗装技能士等の資格が必要となり、資格があっても「非常勤」では専任技術者になれません。常勤雇用が必要です。
(専任技術者になる資格)
・1級塗装技能士または2級塗装技能士(実務経験3年以上)
・大学(指定学科)卒業後3年の実務経験
・高校(指定学科)卒業後5年以上の実務経験
・実務経験のみで10年以上
・その他、建設業法に基づく国家資格保有者
 
3.誠実性があること
・過去に不正行為や重大な法令違反がないことが求められます。
・会社や役員、重要な従業員に関する経歴も審査されます。
 
4. 財産的基礎(資金力)があること
一般建設業許可の場合:
・自己資本500万円以上 または
・直近の決算で500万円以上の資金調達能力があること
 
5. 欠格要件に該当しないこと
例えば、過去5年間に刑罰を受けた者や、暴力団との関係がある者などが役員等に含まれていないこと。
 
参考:国土交通省「許可の要件」

 

以上の要件を満たせば行政書士より建設業許可は申請できます。申請後に許可が下りた後も継続的な手続きが必要です。
 
毎年、事業年度終了時に「1年間の完成工事高」の提出が義務付けられており、5年ごとに許可の書類更新手続きがあります。
 
更新時には、許可を管轄する担当者が事務所に来訪し、業務実態の確認や、事務所としての体制が整っているかの現地調査が行われます。
 
また、公共工事を請け負うためには、建設業許可に加えて経営事項審査(経審)を受ける必要があります。
 
経営事項審査の結果はインターネット上で公開されており、発注者が業者の経営状況を確認できる仕組みになっています。
 

【よくあるQ&A】

Q1. 資格がなくても塗装工事は本当にできるんですか?
A. はい、500万円未満の塗装工事であれば法律上の資格や建設業許可は不要です。
 
しかし、知識や技術がない業者でも参入できてしまうため、施工ミスやトラブルのリスクが高まります。
 
信頼性を見極めるには、資格や施工実績の確認が重要です。
 
Q2. 「建設業許可」がある業者を選ぶと何が安心なんですか?
A. 建設業許可は「技術力」「経営の安定性」「法令順守体制」が整っている証拠です。
許可を持っている会社は、公共工事などの大型案件も請け負える信頼性があると判断されます。
 
Q3. 「1級塗装技能士」の資格ってどれくらいすごいの?
A. 国家資格の中でも、実務経験と高度な技能が求められるプロ中のプロの証です。
 
現場の技術力に直結するため、「仕上がりの美しさ」や「耐久性」に大きく差が出ます。
 
Q4. 塗装業者のホームページで「建設業許可」や「資格」の記載がないのは怪しい?
A. 一概に怪しいとは言えませんが、記載がない場合は直接確認することをおすすめします。
「なぜ記載がないのか」「どんな資格を持っているか」を聞いてみることで、業者の透明性がわかります。
 
Q5. 危険物取扱者の資格がない業者でも塗装できるの?
A. 一定の条件下では可能ですが、
溶剤系塗料を使用する現場や、シンナーの保管には有資格者が必要です。
消防署の抜き打ち検査に対応できない業者は、法令違反の可能性があります。
 

【まとめ】

塗装業は資格や許可がなくても始められるため、誰もが容易に参入できる業界です。その一方で、専門知識や技術が伴わない業者が増え、悪質なリフォームや詐欺まがいのトラブルも後を絶ちません。
 
資格や許可は「信頼性」と「専門性」を証明する重要な指標になります。
 
特に「1級塗装技能士」や「建設業許可」は、施工品質や安全管理、経営の安定性を保証するものです。
 
塗装業者を選ぶ際には、こうした資格や許可の有無を一つの判断基準にすることをおすすめします。
 
株式会社フクモト工業では、塗装業界における資格取得や許可申請を積極的に推進し、お客様に安心していただける施工品質を提供しています。
 
資格や許可を単なる形式ではなく、職人の技術向上と責任感を高めるためのツールとして活用し、塗装業界全体の信頼性向上に貢献してまいります。
 
以上の事項をしっかり確認し、十分な説明を受けたうえで塗装工事に臨みましょう。
 
大切な住宅や建物を守るための塗装工事だからこそ、確かな基準を持った業者を選ぶことが重要です。
 
弊社では営業所(ショールーム)で建設業許可や資格取得状況を確認することができます。
 
このコラムが、皆様の信頼できる塗装業者選びの参考となれば幸いです。


最終更新日:2025/06/23

この記事を書いたスタッフ

福本 満壽男
代表取締役
福本 満壽男ふくもと ますお
株式会社フクモト工業の代表取締役、福本満壽男です。高校卒業後から塗装一筋、創業66年の伝統を受け継ぐ2代目として、「塗装で守る快適住宅」を目指し、日々現場と向き合っています。外壁・屋根塗装を中心に、リフォームやエコキュート工事、塗装業向け在庫管理アプリ「らくらく塗装屋さん」の開発・普及にも取り組んでいます。
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